「管理栄養士を取得したけど、毎日残業続き…」
「国家資格なのに多忙で薄給…」
現場では悲痛な声がよく聞かれます。筆者である私emimiも給食委託会社に勤めていた頃は毎日帰りが遅く、家族にはかなり負担をかけ悩みました。
また、残業が月に45時間以上発生している場合は違法である可能性があります。法律を盾に会社に改善を要求できるかもしれないので、チェックしてみましょう。
今後のために、残業が多い&少ない職場も紹介します。苦しいサービス残業の実態や、残業の減らし方もお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
管理栄養士はどのくらい残業してる?
管理栄養士の残業は、勤務先により大きく左右されます。
給食施設の場合、一つの施設に管理栄養士が1名配置のケースが多いです。休んだり、厨房の人員不足の補充に入ったりした場合は、事務作業(献立作成や発注など)が滞るため、残業が発生します。
一方で、複数の管理栄養士が配置されている職場では、お互いで業務をカバーできるため残業なく定時で退勤できる場合が多いようです。
そもそも会社員の平均残業時間は?
厚生労働省が発表しているデータによると、日本の正社員の平均的な残業時間は13.2時間となっています。
一方で、民間会社による調査では22.2時間との結果が出ており、11時間もの差が…。
厚生労働省(国)と民間調査で隔たりがあるのは、企業が国に申告する際に少ない残業時間を申告しているからと考えられます。
民間調査は実際に働いている人に聞いているので、実態に近い数字となっているでしょう。
管理栄養士の職種ごとの残業時間
前述のとおり、下記の表(管理栄養士に関わる職種だけ抜粋)は厚生労働省の調査結果なので、実態よりも少ない残業時間が示されていると考えられます。
とはいえ、残業時間の多い少ないの指標にはなるので、正社員の職種別の平均残業時間を見てみましょう。
少→多 | 職域 | おもな職場 | 所定外労働時間(残業)/月 |
1 | 医 療・福 祉 | 医療施設・介護施設 | 6.3時間 |
2 | 生活関連サービス等 | スポーツジム | 8.3時間 |
3 | 飲食サービス業等 | 給食委託会社・社員食堂・飲食店 | 9.7時間 |
4 | 平均的な残業時間 | – | 13.2時間 |
5 | 教育・学習支援業 | 学校・幼稚園 | 13.8時間 |
6 | 学 術 研 究 等 | 製薬メーカー・健康食品メーカー・化粧品メーカー | 15.1時間 |
7 | 情 報 通 信 業 | ライター | 16.2時間 |
参照:「毎月勤労統計調査 令和3年分結果確報第2表 月間実労働時間及び出勤日数」/厚生労働省」
管理栄養士の一日の勤務スケジュール(給食委託会社)
どのような場合に残業が発生するのかを知るために管理栄養士の一日のタイムスケジュールを紹介します。
下記は、私が給食委託会社で勤めていたときの早番の例です。
- 5:40 出勤・身支度
早めに出社し、ユニホームに着替えます。毛髪が帽子から出ていないか、爪は短いかなど身だしなみをチェックして、頭から足まで粘着ローラーをかけて異物を取り除いてから厨房に入ります。 - 6:00 朝食準備
昼食分の食材の切り込み・朝食の味見・きざみ食やとろみ食調理・盛り付け・トレーチェック(アレルギー対応など各患者さんに適切な食事が配膳されているか確認する)・配膳など - 8:00 片付け・検収
調理用具の片付け・届いた食材の品温や個数などをチェックして、冷蔵庫にしまいながら、在庫数のチェックなど - 9:00 事務作業
食材発注・献立作成・シフト作成・衛生チェックリストの確認など - 10:00 味見
味見をして、調理員の方に適度な味付けに調整をしてもらいます。 - 11:20 検食・トレーチェック
できあがった給食の見た目や味付け・量をチェックします。(施設側のスタッフさんが行う場合も) - 12:00 片付け・洗浄
調理用具の片付け・厨房の掃除など - 13:00 退勤
トラブルなどが無ければ退勤します。
調理員の人員不足があれば、管理栄養士が補充に入ります。事務作業が滞ってしまった場合に、残業が発生。また、午後の調理員も足りなければ、一日中厨房作業に当たる場合もあります。
残業が少ない職場
前述した管理栄養士の職種ごとの残業時間の表を参考に残業が少ない傾向のある職場をご紹介します。
医療・福祉
平均残業時間は、月6.3時間となっています。
直営の病院や介護施設は、給食管理を委託会社に任せているケースが多いので、計画的に栄養管理業務に打ち込めるのかもしれません。
給食施設の無い美容クリニックや歯科医院も残業が少ないです。
以前勤めていた病院の場合は、イレギュラーな栄養指導が入ったり、研究発表のための資料作りで残業している方もいました。
また、病棟管理栄養士さんのこんな声もありました。
病院栄養士でも毎日残業なのに薄給
ほんとにそうです。
なんでも出来るが故に都合がいい職種と勘違いされるのがなんともイライラするポジションですよね。
栄養管理や厨房業務、おまけに施設の雑用までやって、残業で毎日くたくた…あんだけ頑張ってこの賃金って😢— たぬきもん@管理栄養士 (@eiyo_tanukimon) December 23, 2023
病院であっても、残業が多い職場もあるようです。
介護施設の管理栄養士は、事務室の当番や送迎車の運転・介護の手伝い・お客様の対応など、雑務を任されるケースもあります。職場により残業が多い職場もあるかと思います。
生活関連サービス業
平均残業時間は、月8.3時間です。
スポーツジムが該当すると考えられます。利用者さんとの接客時間が長引くと、残業が発生する場合がありますが、多くはないようです。
飲食サービス業
平均残業時間は、月9.7時間です。
給食委託会社や社員食堂・飲食店が該当すると考えられます。
しかし、現場により残業が多い職場と、少ない職場があるようです。X(旧Twitter)では以下のような声が…。
【給食委託会社でも無駄な残業で稼いでいる人も…】
一応現場を長くやってたので『無駄な残業』にある程度見当がつくつもりです。
なんで明らかに「残業稼ぎ」してるやつが、頑張って『残業削減』してくれている人より給料が増えるのか…。永遠の課題よな…(´・ω・`)
— オカヒジキ@委託会社の管理栄養士 (@okahijiki_eiyou) December 16, 2023
給食委託会社は、配属先によって定時に帰れる現場もあれば、欠員続きで残業が多い現場もありました。上記の声のように、必要のない残業をして稼ごうとする場合は、栄養士から注意せねばならず、とっても厄介ですね。
残業が多い職場
残業が多いとみられる職場についても見ていきましょう。
教育・学習支援業
平均残業時間は、月13.8時間です。
学校や幼稚園が該当すると考えられます。カレンダー通りの休日があり、児童が夏休みや冬休みの際は、数日間の特別休暇が付され、そのほかは献立作成や研修会といった業務があるようです。
学術研究
平均残業時間は、月15.1時間です。
製薬メーカー・健康食品メーカー・化粧品メーカー などの開発・研究部門や、大学などの研究室が該当すると考えられます。
職場によっては、研究だけでなく、栄養指導も業務範囲に含まれているケースもあるようです。
研究職の管理栄養士は、350万円~800万円ほどの高年収ではありますが、労働時間は長めなのかもしれません。
情報通信業
平均残業時間は、月16.2時間です。
管理栄養士ライターが該当すると考えられます。WEB上の記事や広告文を書いたりするのがおもな仕事です。
管理栄養士ライターの多くは、会社に属さず、企業からの業務委託を受けて仕事をしています。
ほとんどが在宅ワークなので、「残業」という概念がない人が多いかもしれません。残業の大小は、個人によりさまざまですが、売れっ子になるほど忙しいでしょう。
現在、ライターとして活動しています。記事を書くのが遅いので、15時間ほど執筆しているときもありますね。でも、出勤時間がなく、合間に家事をしたり、家族と同じ空間にいられるのはありがたいです。
管理栄養士のサービス残業の実態
職場によっては、サービス残業を強いられているケースもあるようです。X(旧Twitter)では、以下のような声が上がっています。
「シフト作りは家でやる」を強要する上司
ただでさえ現場の残業だけで法定残業時間ぴったりにシフト組んでるのに、栄養士インストラクターが入ってくそみたいに事務の量増やしてったんだけど
シフトはみんな家で作ってきてるって、それはあなたが言ったらいけないのでは??
元々、いままでもシフトは家で作ってきてるんだよ
— しずむ@手洗いうがいすまほ除菌 (@jacqubeth) December 8, 2023
私も給食委託会社に勤めていた時は、シフト作成や献立作成を自宅に持ち帰ってやっているときもありました。調理員の欠員を埋めるために厨房に入るので、栄養士の事務作業をする時間が無いんですよね。完全にサービス残業でしたね…。
正社員は「定額働かせ放題」じゃない
栄養士が厨房の欠員補充で入る分、厨房の人件費は浮いてるはずなのに、栄養士業務が終わらず残って仕事する分の残業代は出したがらない。
正社員だから、栄養士だから、そのくらいできてあたり前、みたいなの本当嫌
定額働かせ放題じゃないんだけど— まる (@N46102777) December 1, 2023
欠員がある場合、その分は残業が発生するのは当然ですよね。もちろん会社としては、残業がない方がありがたいだろうけど…。もしも、残業なしで業務が終わったとしたら、その分お給料に上乗せするのが筋だと感じます。
管理栄養士のサービス残業は違法なの?
結論、会社がサービス残業を強いる行為は労働基準法違反です。
労働基準法では、法定労働時間(1日8時間・1週間に40時間)を超える労働を原則禁止しています。
法定労働時間を超える場合(時間外労働=残業)は、割増賃金の支払いが必要です。
そのため、残業をした分の賃金を支払わない場合はもちろん、割増分の賃金を支払わない場合も労働基準法に違反します。
残業を減らすための対処法
残業代が出る場合はまだしも、対価がない残業を続けていくのは辛いですよね。モチベーションが下がり、仕事への意欲が低下するのは言うまでもありません。
そんなときの具体的な対処法をご紹介します。
上司に相談する
まずは、上司に相談しましょう。残業が発生する理由や、困りごとを伝えていくことが大切です。
具体的な業務内容や人員配置の見直しをしてくれるかもしれません。給食委託会社の場合は、残業が少ない勤務先に異動を検討してくれる可能性もあります。
私は厨房のチーフだったので、調理スタッフの業務量の多さや不満などを吸い上げて、現場で解決しきれないことは、上司に相談していました。
しかし、話を聞いてくれる優しい上司は、メンタルを病んで辞めていってしまうケースがほとんどでした…(泣)
短時間勤務・パートになる
正社員の場合は、雇用形態を変更するのも手です。とくに給食管理の現場では、扶養内で働くパートの調理員さんが多いため、正社員がパートさんの穴をカバーします。
「扶養内で働きたい」と伝えれれば、お給料も下がりますが無理な残業も減るでしょう。
私は、あまりの多忙さとストレスでうつ病を発症し、半年間の休業をしました。3歳の子どももいたので、復職後に一時的にパートに落として仕事をセーブできましたよ。
残業が少ない職場に転職する
思い切って残業が少ない職場に転職するのもよい方法です。残業が少ないのがスタンダードな職場であれば、働きやすいでしょう。
自分の理想を明確にして、勤務時間・内容・待遇の条件がマッチする職場を選ぶことが大切です。
私の場合は、「栄養指導がしたい」という理由から、非常勤で病院に転職をしました。結果、ノー残業の体験も味わえました。家庭との両立もしやすかったですよ(^^)/
まとめ
残業が多過ぎて「プライベートとの両立ができない。」「毎日ヘトヘト…」といった悩みを抱える管理栄養士がいる一方で、毎日定時で帰宅している人もいます。
あなたが理想的な働き方を叶えたいと願うのならば、まずは、さまざまな働き方を知ることから始めてみましょう。管理栄養士としての活躍の場や異業種転職については、
にて、綴っています。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
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